共働学舎のチーズを食べに新得町まで行ってきました!

共働学舎新得農場「ミンタル」カフェ

チーズ好きな方だったら、「共働学舎」をご存知かもしれませんね。

私が共働学舎を知ったのも、チーズ専門店で、ここのチーズを試食させてもらったからなんです。

共働学舎のホームページに行ってみると・・・

現在は約60人がこの牧場で生活しています。多くの人は以前、「ひきこもり」「不登校児」「障害者」「非行少年」などと呼ばれ、悩みを抱えて遣って来ました。(共働学舎のHPより)

おや、「障害者」の方も働いているんだ・・・
(障害者という言葉には敏感です笑)

がぜん、興味が湧いて来ました!

・・・というわけで、今回のゴールデンウィーク、北海道の実家に帰省しがてら、「共働学舎 新得農場」に行ってきました!

共働学舎のチーズは幸せな味だった

相当近くまで来ているはず・・・想定内でしたが、やっぱり、迷いました。
カーナビ付いているのにーー!

さっき、はっきりと「付近に到着しました」言いましたよね!
一体ここはどこ?!それらしい建物や農場は見当たらないよ!

ナビを責めても、返答はなく・・・

まわりは、のどか~、牧歌的な風景が広がっているばかりでした。
聞こうにも人の通りはありません・・・

助手席の息子は、さっきから半べそで「かえりたい」を連呼しています。

なんとしても、たどり着かねば・・・帰るに帰れないよ・・・

仕方ないので、大きめの道まで戻り、今度はナビはあてにせずにグーグルさんで、車を走らせ、「あっ、看板発見!」ここ右折だ!よかった~


そんなこんなで、令和元旦の5月1日、お昼少し前に共働学舎の「ミンタル」カフェに到着しました。


見ていると・・・ゴールデンウィーク中だからでしょうか、ひっきりなしにお客さんがやってきます。どっからこんなに人が湧いてきた?というほどです。

さっきまで、人気のない道を、私たちは延々さまよっていたのでは?
一体なんだったんでしょう?

駐車場は満車で、カフェに続く白樺並木の道にも何台も車が駐車して・・・

「ミンタル」カフェは満席、大盛況です。
けっして狭いわけではなくて、20~30人ぐらいは入れるでしょうか。
席が空くのを待って、テラスでソフトクリームを食べている家族連れもいます。

わ〜とっても人気あるんだね~、チーズ美味しいもんね〜。

正直、こんなに人気があるとは、思っていませんでした。

人がいっぱいのこの状況には、本当にびっくりしました。

こんなところ、と言っては失礼ですが、人口より牛の数の方が多いという土地柄なんです。

ここに、「共働学舎のチーズ」を求めて、こんなに人が集まってくるなんて・・・

生産者としては、こんなに嬉しいことはないですよね。

唯一無二のブランド力と言うことですね。

すべては、美味しいチーズがあってのことなんだな~と、つくづく思いました。

さあ、なんといってもチーズを食べないと!

「農場チーズ盛り合わせ」をいだきました。

予想通り、裏切らない美味しさです。

なんというか、味わいが日本的。

輸入されているチーズとは、明らかに風味が違います。

どこか、なごやかな味でした。

チーズ特有の臭さがたまらないんだ〜、チーズ好きの方は言うと思いますが、それもちゃんとあって・・・

ひとかけらですっかり満足させていただきました。

息子も、ラクレットチーズがタラ~リとかかった酵母パンとじゃかいもを頬張って、やっとひと心地ついた様子です。

さっきまでの泣き顔はどこかに行って、ソフトクリームを舐めている息子の横顔は幸せそうでした。

共働学舎のチーズが美味しい理由

「共働学舎 新得農場」の暮らしぶりが伺えるイラストマップが配布されていました。

美味しいものって人を幸せにしますよね~。

美味しいチーズを食べたら、これを作っている共働学舎がどんなところで、どんな人が作っているか、知りたくなりました。

本格的なチーズを作る環境、施設、人材が揃っている、ということは、チーズを食べたので分かっています。

商品のラインナップからも、桜や笹や柳といった、この土地ならでは素材が、チーズとうまくコラボレーションしています。

農場のある新得町の、この土地の恵みを最大限活用しているということもみて取れました。

そして、何よりも、この土地で育った牛たちが供給してくれるミルクの存在がが、一番重要なんでしょうね。

この土地の草を食んで、4つの胃で反芻して、絶妙な循環で、土地のミルクを作ってくれているわけですからね。

最初に食べたときに、「日本的な味だな~」と思ったのは、何よりもこの土地の風土を感じたからなんだと思います。

チーズというもの自体は、もともと、日本のものではないですよね。

共働学舎のチーズ製法も、フランスAOCチーズ協会会長ジャン・ユベール氏から伝授されたものだそうです。

AOCとは・・・牧畜地域から牛種、製造法、熟成法まで、昔ながらの製法を遵守して作られた農業製品、ワイン、チーズなどに与えられる認証。
アペラシオン・ドュ・オリージーヌ・コントローレ(原産地統制呼称)の略。

 

フランスの伝統的な無殺菌乳でつくるチーズ製法が、ユベール氏の「牛乳を運ぶな」という教えと共に、真面目に遵守されています。

この、製法はフランスのものだけれど、でも、ここの土地でしか、このチーズは作れないという・・・この感じがすごく面白いなぁ〜。

これは、なんだか、日本人が得意とするところなんじゃないかな〜と思いました。

何事も極めると、そこには極意が生まれるというか、哲学にまでなったりするのでしょうが、
日本人が極めると「道」になるというか・・・チーズ道?なのかな・・・

良いものは取り入れて、融合させて、独自のものにまで品位を高めていけるというのは日本人の技なのではないかと・・・チーズを食べながら、そんなふうに、妙に腑に落ちて、一人で納得していました。

共働学舎ができたのは・・・

「本物のチーズ」は、その味で、作り手の熱意を語るんですね。

そもそも、この「共働学舎」、共に働くというネーミングにも創設者の熱意が感じられます。

共働学舎を作ったのは、自由学園の教師であった宮嶋眞一郎氏です。

1978(昭和53)年設立ですから、今から41年前ですね。

自由学園はご存知の方も多いと思いますが、東京都東久留米市にあるキリスト教の学校で、創設者は、クリスチャンでジャーナリストでもあった羽仁吉一氏、もと子氏です。

羽仁もと子さんは、家計簿を作った人としても有名ですね。

一度行ったことがあるのですが、東京都下に位置するものの、歴史的な建築物と豊かな自然環境を有し、現代社会とは少しかけ離れた異空間にあるような・・・そんな印象を持った記憶があります。

歴史的な建築物と一口に言ってしまいましたが、設計者は、あの世界的建築家フランク・ロイド・ライドとそのお弟子さんの遠藤 新氏です。

そんな中で、生徒たちは、自らが責任を持って、毎日の生活を行うという「自労自治」の精神に基づいた生活をしています。

給食も生徒が作り、材料となる米や野菜、牛や豚・牛など、食物は自分たちで育てるということが、日常的な仕事になっています。

この「自労自治」の精神は、どうやら、そのまま「共働学舎」の理念にも受け継がれていますね。

自由学園は教育の場で、「共働学舎」は働く場で、2つは機能は違いますが、同じ志を持っています。

実際にどのように障害者の方が働いているのか、内情は見学できませんでしたが、共働学舎には、本当にいろいろな困難を負っているさまざまな人が、それぞれの関わり方をしているようです。

自閉症、癲癇(てんかん)、弱視、統合失調症、躁鬱(そううつ)・・・引きこもりや学習障害、アスペルガー症、ホルモン異常症、サリドマイド症候、舞踏病、ホームレス・・・

障害の種類や悩みは本当に様々ですが、共通して言えるのは、社会の周辺部にいるアウトサイダーで、評価されないけれど、人一倍頑張って生きている人たちだということです。


共働学舎の「理念」という遺伝子

宮嶋眞一郎氏の息子さんで新得農場の代表である宮嶋 望氏は、共働学舎の活動をもとに著作を出されています。

「生命は繋がっていて、循環していること」「チーズや自然との生活で培ってきた実体験」を、雄弁に語ってくれています。

どれも、豊かな土のぬくもりが感じられる、言葉です。

引用したいと思った言葉がたくさんあって・・・どれにしようか、困りました。

ご興味のある方はぜひHPや本を読んでみてください。

ここでは、私が印象的に残った言葉をHPから引用します。

経済優先の世の中からはじき出された人々と共に「自労自活」の生活をめざしました。流行に左右されることなく、スローペースの私たちが生み出せるものは何か。考えたのが、当時、ほかの酪農家は手を出さなかったハード系のナチュラルチーズでした。
じっくり時間をかけて熟成させなければ、本物の味に仕上げることのできない製法なら、私たちの得意分野になるはず。
・・・・・・・・・・・・・・

当初から僕たちが取り組んだのは、お金がなくても持続的に自活できる仕組みをはやく作ること。
・・・・・・・・・・・・・・

父 眞一郎のかかげた精神をひとことで言えば、「自労自活」です。
たとえ心身に重たい困難を抱える境遇にあっても、自分で自分の生活を成り立たせていくということ。
これができれば、多くの人が生きることの自由や手応えを実感できるでしょう。
・・・・・・・・・・・・・・

私たちは産業革命以前のいにしえ
の教えや伝えを現代科学の目であらためて探求しながら、すべての生き物を共振させる「自然の摂理のままの酪農」に取り組んでいます。

 

チーズによって「自立自足」が可能になった新得農場は、自立して働く人や飼われている牛、栽培されている野菜が、一つひとつの細胞で、全体として有機体を作っている、そんなふうに思われました。

大地と共にある・・・すこぶる健康的な生命体です。

そして、求められるものとして存在して、社会の一環を成していて、自由学園や共働学舎の創設者の意志は、確実に宮嶋 望氏や「共働学舎」で共に働く他の人に受け継がれているのでしょう。

それは先祖から子孫へ脈々と続く、遺伝子のようです。

これからも次世代へ受け継がれていくことと思います。

まとめ

さて、今回の珍道中は、私たち親子にとって、有意義な経験になりました。

息子にとっては、予想のつかない慣れない体験で、なかなか受け入れ難いものだったと思います。

でも最後はなんとかなった!という、楽しい経験に転換できたと思います。

一方、私はと言えば、本物志向の大切さを実感しました。

商品が持っている力が、その商品が育っていく過程も含めて、本物が障害者の生活を豊かなものにしてくれる・・・そんな実感できて、とても嬉しく思いました。

もちろん、それを作るのは並大抵のことではありませんが、できないことはないと言うこと、希望が見出せました。

多くの作業所の商品などは、障害者が作っているということで、残念ですけど、同情的に捉えられることが多いように思います。

クオリティの高い商品が提供できている方が稀であるのが現状でしょう。

でも、「共働学舎」のような高い理念を掲げて活動することは難しいとしても、少しの視点の変換で、新たな取り組みを目指すことはできると思うんです。

生きにくさの象徴のような障害を持った彼らが、今より少しでもよく生きられる社会になったら、そこは誰にとってもより良い社会であると言えるんじゃないかと思うんです。

たとえば人工知能が、人間の多くの単純労働を肩代わりするようになったとして、そんな時代になったとしても、果たして、このチーズは作れるのかな・・・

気温や湿度やチーズに使われるすべての材料や環境が、数字に置き換えられたとして、すべてがスムーズに生産されたとして、人工知能が最高のコンディションと判断したとしても、このクオリティのチーズが作れるのかな・・・と、単純に思うからです。


さっ、とりあえずは、季節限定チーズをお取り寄せしちゃおう!

 

宮嶋 望の発言と実践
http://nozomu-miyajima.net

共働学舎 新得農場 HP
http://www.kyodogakusha.org

 

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