障害者権利条約のことを知っておこうと思った

「障害者権利条約」って知ってますか?

このところ、たてつづけに「意思決定支援」「合理的配慮」がテーマのセミナーがあって、出席してきたんですが・・・。

講師の方は、まず最初にこの「障害者権利条約」の話をしていました。

セミナーのメインテーマは「意思決定支援」「合理的配慮」という現場の対応についてなので、条約の内容についての詳しい説明がなかったのですが・・・

現在の障害者支援の起点となったのが、この「障害者権利条約」ということで、障害者の親としては知っておいたほうがいいですよね。

一体、どんな条約なのか?・・・気になりますよね。

・・・そんなわけで調べてみました。


障害者の権利に関する条約

そもそも「条約」って国家レベルのイメージで、それが国内で生活する障害者にどのように関わってくるのか・・・疑問だったのですが・・・

・・・調べていくうちにだんだんとつながってきました。

とりあえず、外務省のHPをみてみましょう。

「障害者権利条約」を検索して(パンくずリストを拾ってみると)、

トップページ>外交政策>日本の安全保障と国際社会の平和と安定>
人権・人道・難民>人権外交

ふーん、今回の「障害者権利条約 正式名称:障害者の権利に関する条約」は、人権外交の中の主要人権条約のひとつに分類されています。

ほかの人権条約には、国際人権規約(社会権規約・自由権規約)、女子差別撤廃条約、児童権利条約、人種差別撤廃条約、拷問等禁止条約、強制失踪条約などがありました。

そして、さらにこれらの条約の元には「世界人権宣言」があります。

「世界人権宣言」は第二次世界大戦後、人権及び自由を尊重し確保するために、すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準として、国連総会において定められたものです。

なるほど、国際的な視点で人権を考えるようになったのは、ここからなんですね。

人間による非道な行為や人権が考慮されない事件は、大小、後を絶たないですが、少なくとも社会として宣言しておくことは重要なことですよね。

この「世界人権宣言」が宣言されたのは1948年のことで、その27年後、1975年には「障害者の権利宣言」が採択されました。

そして、やっと「障害者権利条約」が採択されたのが、2006年。

この間、58年・・・。

これを長いとみるか、短いとみるか・・・

私としては、そんなにかかったのか・・・と思ってしまいました。


でも、少なくとも「障害者の権利に関する条約」が採択されたのは、満を持して時代が答えを出したということなんでしょう。

少なくとも「世界人権宣言」が宣言されたときと同じくらい、障害者にとっては重要な出来事だった、と思います。

世界の国々が集まって、「そうしましょう」と共通認識をしたというわけですから。

・・・では次に、この国際条約が採択された経緯をみていきます。

「“Nothing About Us Without Us”」

「障害者の権利宣言」が出され、「障害者権利条約」が採択されるまでにも、様々な取り組みがなされています。(以下のとおり)

  • 1975年 「障害者の権利宣言」が採択される。
  • 1976年 1981年を「国際障害者年」にする。
  • 1982年 「障害者に関する世界行動計画」
    同年  「国連障害者の十年」(1983年 ~1992年)が採択される。
  • 1993年 「障害者の機会均等化に関する標準規則」が採択される。
  • 2001年 「障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括的・総合的な国際条約」決議が採択される。国際条約起草のための「アドホック委員会」が設置される。(アドホックとは、「特定の目的のための」「限定目的の」といった意味のラテン語、委員会には各国の障害者団体も参加。)
  • 2006年 「障害者の権利に関する条約」が採択される。

上記の2001年に設置された「アドホック委員会」には、各国の障害者団体も参加・傍聴し、8回にもわたる会議が行われました。

日本の代表団も障害当事者を顧問に迎えて、積極的に起草交渉したとあります。

また、多くの障害者団体が国連本部のあるニューヨークに足を運び、実際にアドホック委員会を傍聴しました。

・・・それというのも、「“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)」という障害者の間でよく言われているスローガンがあったからと言われています。

そりゃそうですよね。

当事者抜きで条約の草案を決めてしまったら、それこそ、これからまさに起草しようとしている人権条約に反しますよね。

このスローガンは、名実ともに障害者のための条約を作成しようという、国際社会の総意が表れていたと言えます。

・・・そうやって、ようやく採択された条約も、実は日本国内に反映されるまでには、さらに時間がかかります。

採択された2006年以降の日本の動きをみていきましょう。

条約が採択されて、実際に発効されるまで・・・

2006年「障害者権利条約」が採択されて、実際に2014年に日本で発効するまで、8年を要しています。

  • 2006年 「障害者の権利に関する条約」が採択される。
  • 2008年 「障害者の権利に関する条約」発効
  • 2007年 高村正彦外務大臣(当時)が条約に署名
  • 2014年 「障害者の権利に関する条約」批准
    同年  「障害者の権利に関する条約」発効(2月19日に同条約は我が国について効力を発生した。)

日本の動きでいうと、当時の外務大臣が署名した年が2007年ですから、署名から批准までの2006年〜2014年、この間、国内で何が行われていたでしょうか?

実際に、障害者に対する法律を突き合わせてみればわかることですが・・・

  • 2009年12月 「障がい者制度改革推進本部」を設置
    集中的に障害者に関する制度改革を推進する
  • 2011年8月 障害者基本法の改正
  • 2012年6月 障害者総合支援法の成立
  • 2013年6月 障害者差別解消法の成立と障害者雇用促進法の改正

この間、実にいくつもの制度改正がなされていますよね。

7年の間に、4つの法制度が改正・成立されるのは、かなりの異例のことなんじゃないでしょうか・・・

これについては、国内の障害当事者から、条約の批准(締結)に先立って、国内の障害者に関する制度改革を進めるべきという意見があり、その意見をすぐさま反映させて、制度の充実を図ったと、国内外から高く評価されていると聞きます。

そういえば、息子がまだ保育園だったとき、2010年ぐらいのときですが、当時の先輩ママたちが、今度障害者に関する法律が改正されると、よく話題にしていたのを思い出しました。

当時の母たちの意見は、賛否両論、分かれていましたね。

当時、と言っても、まだ10年も経ってないわけですが、障害のある我が子の将来が不安で、法改正に反対していた親たちも少なくなかったんです。

今でもそんなに選択肢があるわけではないですが、自立させて地域で生活していけるというイメージが、徐々にではありますが、持てるようになってきているように思います。

あのころ、法改正を憂いていた親たちが、今どう思っているか、興味のあるところですよね。

まとめ

なんだか、前置きが長くなってしまった感が否めませんが・・・

日本の障害者に関する法制度は、この「障害者権利条約 正式名称:障害者の権利に関する条約」が舵取りをして、大きく変わったということがわかりました。

条約の締結国である日本は、この条約の条文に基づく義務を履行するためにも、これからも様々な施策に取り組んでいく必要があります。

今回、「障害者権利条約」を調べるキッカケとなったセミナーは、「合理的配慮」や「意思決定支援」というテーマでしたが、それらは、条約の条文いうと・・・

  • 第4条(一般的義務)で過程における障害当事者の関与
  • 第2条(「障害に基づく差別」の定義)
  • 第5条(平等及び無差別)

・・・などに該当すると思います。

このように、現在行われている福祉サービスが、なにをもとになされているか、わかっておくのは重要なことだと思います。

これを知っておくことで、親としても、子どもの行く末を見誤ることなくいられると思います。

なによりも、世界中の人が「障害者の人権」を考え、「障害者の人権」がこのように宣言されているということが大事です。

そのことが、親としては心強く、世界中の人々に人種や国を超えて、我が子が支えられているじゃないかという気にさえなりました。

地球のみなさん、ありがとうございます!

外務省HPより

障害者権利条約パンフレット
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/ebook/html5.html#page=1

障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)(Convention on the Rights of Persons with Disabilities)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

コメントを残す

*