成年後見制度ってどんな制度?

この間、同じ障害児を持つお母さんたちと話をしていて、そのときに話題になりました。

「成年後見制度って、どんな制度か知ってる?」

「ああ、そういうのあるっていうのは知ってるけど・・・」

大人になってからの話でしょ。まだ先の話なんじゃない・・・

う〜ん、実際、どんな制度なのか?みんな知らない様子です。

「後見」って、早くに両親を亡くしてしまった未成年の子どもにつけるイメージがありますが、それの成人版って思えばいいんでしょうか?

この際スッキリしたいですね。

後回しにしないで、「成年後見制度(せいねんこうけんせいど)」今のうち調べておきましょう!

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、簡単に言うと、

 精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により、

判断能力が不十分な方を保護・支援するための制度

となっています。

契約などの法律行為や生活に関わる財産管理を、被後見人(制度の利用者)の不都合にならないように代理人(後見人)に行ってもらう、というものです。

うちの息子の場合でいうと、知的障害があり、日常的な買い物すら一人ではままならない状態なので、親の没後、面倒をみる人がいなくなったら、これは是非とも必要な制度と言えます。

ですが、その一方で、この制度は本人の行為を制限するというものなんです。本人が「やりたい!」と主張しても、後見人によって許可されないという事態も起こりうるわけです。特に、障害者はうまく表現できないため、後見人に希望がうまく伝わらないということも起こりうるかもしれません。

個人の権限を尊重するための成年後見制度ですが、後見人自身によって損なわれてしまうことも懸念されます。制度の良さが活かされないのでは意味がありませんよね。

成人年齢に達した人に関することなので、「判断能力がないから後見人を立てたい」と申し立てしない限りは、後見人はつかないんですが、十分に理解した上で、本人にとって本当に必要か、よくよく考えて、決断をする必要がありそうです。

では、次に本制度の背景をみてみましょう。

3つの基本理念

もともとは、禁治産者制度だったものが、2000年に改正され、成年後見制度になったのですが・・・この”禁治産者”という言葉、ご存知でしたか?

私は今回初めて目にして、わーこんな言葉があるんだと、ちょっとびっくりしてしまいました。文字通り、自分の財産を管理処分することを禁じられている者という意味ですが、なんだか音の響きが古風というか、時代錯誤というか・・・。

差別的な響きに聞こえてしまうのは、私だけでじゃなかったようで・・・、2000年の本制度の改正には、今までの古い制度を改める意味合いが強く現れています。

全面的にアップデートした成年後見人制度には、大きく3つの理念が掲げられています。 

1. 現存能力の活用

その人の持っている力を最大限生かして、自分らしく生きる。

2. ノーマライゼーション

可能な限り、地域社会の一員として、通常の生活が送れるよう環境や仕組みを作り出す。 

3. 自己決定権の尊重

自分のことは自分で決めることができ、その意思をみんなが尊重する。つまり成年後見人が代行決定するのではなく、意思決定の支援をする。

ようやく現代の情勢に沿う法律になったということでしょうか。

実は、かねがね、障害者にまつわる用語って、古めかしいなぁと思っていたんです。たとえば「授産所」。これを初めて聞いた時は、「ん?何する場所?」まったくわかりませんでした。

「授産所」とは、障害者の雇用施設のことです。「働く」というよりは、援助されながら作業をするという、「保護」の意味合いが強い表現ですね。

さすがに2006年の障害者自立支援法の施行で、「授産所」は「事業所」に移行しましたが、このように、使われている言葉ひとつ取っても、障害者に対する社会通念は、古いままだったということが見てとれます。2006年って、そんなに昔のことではありませんよね。

重度障害者の働く施設の現状は、それほど変わっていないのかもしれません。変わらない、変われない部分も多々あると思います。でも、やっと法改正がされて、古い体質が新ためられる基盤ができてきたのだと思います。

これから、徐々にでも、障害者側にも、社会の側にも、「共に同じ社会の中で生きる」、という意識が、できていくのではないでしょうか。

では、後見制度の中身についてみていきましょう。

成年後見には、法定後見と任意後見、2つがある

成年後見制度には法定後見と任意後見2つがあります。この2つの違いは、本人の判断能力の有無です。

  1. 申し立て時に、本人がもう既に判断能力が不十分な場合は、民法に基づく法定後見になります。
  2. 一方、まだ、十分に判断能力があるが、将来を見越して備えたいという場合は、任意後見契約に関する法律に基づく任意後見です。

2.任意後見は、あらかじめ任意後見人を選び、公正証書で任意後見契約を結んでおくものです。これは、高齢の方が将来のことを考えて準備するというイメージですね。

現状において、すでに判断能力が曖昧な障害者には、1.法定後見という選択肢しかないようです。でもこれだと、準備しておいて、いざ必要になったときに申請して・・・という段取りになるんでしょうか・・・?

その、いざ必要になったときって、一体いつなんでしょう?

予想ができませんよね。心配してたらキリがないんですが、もしかしたら、明日あっけなく親が死んじゃう可能性だってあるわけで・・・縁起でもないですけど。

親の目の黒いうちは・・・とか、死んでも死に切れないとか・・・いろいろ言われますけど、いざ必要なときは、明らかに親がいないときで、障害者の兄弟姉妹とか、親戚とか、結局周りがバタバタしてしまうことになりますね。準備しておいたとしても、やっぱり慌てて申請する羽目になりそう・・・

で、いろいろ調べているうちに、あまり前例がないのですが、「親権を使って、親が障害のある子を代理して、任意後見を締結する」という事例があったんです。

この方法、一体どういうこと?法律的な手続きが複雑そうで、どんな契約になるのか、いまいちイメージがつかめていないのですが、後見人をあらかじめ決められるメリットがあるらしいんです。

最終的な後見人になるNPO法人を探さなければならないとか、いろいろ難易度は高そうなんですけど、こんな選択肢もあるんですね。ゆくゆく成年後見制度を使うと決めているのだったら、この方法は最善策のようにも思います。

注意しなければならないのは、未成年のときでないと締結できないという点。タイムリミットがあります。2022年からは、18歳が成人年齢になりますから、うちの息子は、あと4年。あんまり時間がない!ですが、この方法も視野に入れて、可能性を考えていく必要がありそうです。

私自身、詳細がよくわかっていないので、この方法についてはもうちょっと調べてみたいと思います。興味がある方は、実際に親権を使って「任意後見制度」を結んだ方のfacebookがあるので、こちらをご覧ください。

https://www.facebook.com/nicooffice/

また、関連の記事を見つけたので、リンクしておきます。ご参考まで。

「親権者による未成年障害者の任意後見契約について」の記事(親なきあと問題相談室 ファミリア)

http://oyanakiato-familiar.com/expertise/761

ついで、この制度のメインとなる法定後見の内容について、みていきましょう。

法定後見には、後見・保佐・補助、3つの類型がある

前述の法定後見には、本人(制度を利用する人)の判断能力の程度によって後見・保佐・補助3つの類型があります。

どの類型になるかは、申し立てのときに提出した医師の診断書などが考慮され、最終的には家庭裁判所の判断になります。

本人の希望がそのまま通るわけではないのですが、診断書を書いてもらう医師にはきちんと子どもの状況を伝えて適切な類型になるようにしたいものです。

それというのも、類型によって、後見人の権限や職務の範囲が、違ってくるからです。

  1. 後見:判断能力が欠けているのが通常の状態の方に対応
  2. 保佐:判断能力が著しく不十分な方に対応
  3. 補助:判断能力が不十分な方に対応

後見は、たとえば、日用品の買い物なども一人ではできない場合です。

保佐・補助は、日用品の買い物などは一人でできるが、重要な法律行為などは誰かの支援が必要な場合です。

保佐・補助の場合は、保佐人、補助人の方に、代理してもらいたい範囲を申し立てすることができます。

知的障害のあるうちの子どものようなケースは、この場合、後見になるんだろうなぁと思います。

後見人がやってくれること

じゃあ、後見人は何をしてくれるんでしょう?

たとえば、うちの息子に、将来、後見人がついたとして、その仕事とは?具体的にどんなことをするのでしょうか?

後見人の主な役割は、財産管理と身上監護、この2つです。

財産管理は、本人の日々の生活を維持するために行われることで、細かいところでは、税金やグループホームなどの施設の利用料などの支払い、本人に生活費を渡すなど。大きなものでは不動産契約や相続に関するもの、があります。

もう一つの身上監護は、施設に入所するときや、病院に入院しなくてはならなくなったとき、あるいは、療養や介護サービスを受けるときなど、契約を結ぶ必要が出てきますから、それをしてもらうということですね。

成年後見人は、本人の利益を考えながら、財産全体をきちんと管理して、本人が日常生活に困らないように十分に配慮していかなければならない、責任のある仕事と言えます。

親の立場からしてみれば、後見人は親代わり、できれば書類仕事だけではなく、障害者の生活を十分に理解して、人間的な対応をしてもらいたいと、どうしても思ってしまいますね。

とはいえ、日常的な対応は後見人の仕事の範疇ではなく、日常的な対応をしてくれるのは、ケアサービスをするヘルパーさんや援助スタッフの方達です。

それぞれの立場の方が、それそれの役割を果たし、うまい具合に連携して、スムーズに本人支えてもらえたら・・・それが本当に一番ベストなんでしょう。そのしくみを作っておくというのが、親の準備なのかなと思います。

では実際に、どんな人が後見に選ばれるのかというと・・・

どんな人が後見人になれるの?

「選ばれる」と書いたのは、残念なことに、親が後見人を選ぶことができないからです。後見人はあくまでも裁判所が選びます。法定後見の場合、申し立て時に候補者を記載することができますが、必ずしも希望通りになるとは限らないんです。

前述の任意後見のところで触れた、「親権によって子供の代理をして任意後見の契約をする」方法に、私が注目しているのは、このデメリットを回避できるからです。

誰が後見人になるのか、親としては本当に心配です。できれば信頼できる方、あるいは法人に、子供の将来を託したいと願う、その気持ちは痛いほどよく分かります。

この頃の傾向では、弁護士や社会福祉士などの専門家が指名されるケースが多いようです。その背景にはあるのは、親族間での金銭トラブルだとか・・・。

でもこの親族間のトラブルというのは、多くの場合、高齢者の方が認知症などになって子供たちが遺産相続とかでトラブルになるというケースだと思うんですよ。おんなじ制度内で考えられているので、ケースが違うのに、こんなことが起きてしまうのではないでしょうか?

これは私の思いですが、後見人を指名できないというのは、障害者とその親にとっては、最大のデメリットだと思うんですよね。これ、何とかならないでしょうか?この点は、残念ながら、障害者とその家族にはマッチしない制度だなぁと思ってしまいます。

成年後見制度のデメリット

最後に、ここに挙げるのは障害者の親という、個人的な立場からのデメリットです。先ほど、後見人を親が指名できない、ということは書きましたが、他にも、デメリットと感じることがあります。

それは、お試しできないということ

法制度のことですから、これ、当たり前の話なのかもしれませんが、思っていた制度と違った、やっぱりうちの子どもの生活には合わない、やめたいとなっても、制度をやめることも、後見人を変えてもらうこともできません。

後見人になった方が、意に沿わない、気に入らないとなっても、裁判所が中立な立場で選んだ後見人ですから、おいそれと、解任ができないんです。

また、親族や兄弟など、個人が後見人になったとして、その方が病気になったり、海外で暮らすようになったり、都合が悪くなって後見人をやめたいとなっても、辞退できないんです。

月々20,000円程度の支払い

そして、後見人制度が始まった時から、後見人には報酬を支払わなくてはなりません。東京都の相場は、月々20,000円です。障害者の収入を想像してみてください。後見人が必要な障害者の生活費は多くの場合、障害基礎年金で賄われます。自分で得られる収入はごくわずか。月々20,000円は大きな出費です。これを何十年分でしょうか、一生払い続けることになります。

高いとか、安いとか、そんな問題ではないのかもしれませんが、成年後見制度を使うか使わないか選択するときの、また、使うとしてもいつからするのかと、考えさせられる条件のひとつになりそうです。

あれやこれ、いろいろメリットもデメリットもあって、親としては何とも悩ましい問題です・・・。法制度で守られるということは、それの枠内の制限を受け入れるということです。私の感覚では、どうしても自由度がないと感じてしまいます。制度に合わない状況が生まれたとしても、対処できないのは苦しいなぁ・・・

じゃあ他に、本当に他に方法はないのでしょうか?

〝成年後見制度〟を使わなかったら?どうなるんでしょう?

他に使える行政サービスがないかどうか、もっと探してみたいと思います。

今回、調べてみて思ったのは、成年後見制度の概略を知ったぐらいでは、制度を使うかどうか、結論が出せるものではないということです。

成年後見制度の概略を知りたい方は、法務省のサイトが意外にわかりやすかったです。リンクを貼っておきますね。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html

http://www.moj.go.jp/content/001130908.pdf

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