「障害基礎年金」は、うちの息子のような知的障害を持つ人にとって、将来の生活資金源となる重要なものです。
息子が通っている特別支援学校では、毎年のようにPTA主催の「20歳前障害基礎年金の基礎知識」というセミナーが開かれます。
なんで毎年?と思ってましたが、先日はじめて参加してみて、その理由をほとほと実感しました!
「あ〜本当に必要だから、やっているんだぁ・・・」
障害基礎年金のしくみって、普通の年金もそうですが、すごく複雑なんです。
要点だけでも、よく知っている専門家の方に説明してもらうのが一番いい方法なんですよね。
そして今のうちから知っておいて、子どもが20歳になったら迷わずに申請したいものです。
では、自分自身の勉強もかねて、申請のためのポイントを整理していきたいと思います。
目次
障害基礎年金の申請3つの要件とは?
まず、受給するためには、3つの要件を満たしていることが必要です。
その3つとは、
- 初診日要件
- 保険料納付要件
- 障害認定日要件
もう、この用語からして、難解な感じがしますよね。
今、年金機構のパンフレットを見ているんですが、一回読んだぐらいでは、何のことだか・・・ちんぷんかんぷん・・・わかりにくいことが、そのままの用語で書かれています。
「障害基礎年金」のセミナーが行われるのも、頷けます。
今回は、特に20歳前傷病による障害基礎年金について。
うちの息子のような「生まれつきの知的障害」を持つ人にとって、どんな要件なのか詳しくみていきたいと思います。
まずは、初診日についての要件です。
〈初診日要件〉
障害があると診断された初診日が、特定できること。
発達障害の方は、障害があると、はじめて医師に診断された日がそれです。
あくまでも医師による診断で、「何年何月何日」という、きっちりした日付が必要になります。
では、「生まれつき」の場合はどうでしょう。
うちのダウン症の息子は、生まれたときに医師に診断されています。
検査する前だったので、一応、ダウン症の疑いがあるという表現をされましたが、診断はこの時点でされています。
なので、うちの息子の場合は、誕生した日が初診日。
この要件は満たしていると言えます。
今思うと、生まれたとき、筋力がない感じでグッタリしていたんですよね・・・。
産声をあげなかったので、それがすごく引っかかって・・・不安な思いをしたことを今でもよく覚えています・・・
さて次は、保険料を納付しているかどうか、という要件です。
〈保険料納付要件〉
一般的には、20歳から年金保険料を納付することが原則です。
ですが、20歳前に初診日がある場合は、年金制度に加入できない状況なので、この要件は法定免除されます。
法定免除とは、障害等級2級以上の障害状態にある障害年金受給権者の場合、国民年金の納付が法定免除されるいうものです。
では次は、障害認定要件です。
〈障害認定日要件〉
障害認定日の障害の状態が、障害等級1級、2級に該当していること。
障害認定日とは、初診日から1年6ヶ月経過した日です。
「生まれつき」の場合は、20歳の誕生日前日の障害状態が、認定基準に該当すれば、OKです。
というわけで、「生まれつきの知的障害」を持つ、先天的なダウン症の息子は、「初診日要件」「保険料納付要件」については、ほぼ不問です。
そして、「障害認定日要件要件」については、申請時に、提出する「病歴・就労状況等申立書」や「医師の診断書」でもって等級が認定され、年金の受給ができるかどうかが決まるということになります。
さあ、このように「3つの受給要件」は満たされたとなったら、次は具体的にいくら支給されるんでしょうか?
障害基礎年金はいくら支給されるの?
障害基礎年金は、1級で974,125円/年、2級で、779,300円/年です。
金額は毎年4月改正されますが、現状、この支給額です。
厚生年金は3級であっても支給されますが、障害基礎年金は1級・2級の障害程度でなければ支給されません。
この障害等級というのは、年金制度独自の基準です。
身体障害の場合は、身体的な部位ごとにそれぞれ細かく認定指標がありますが、知的障害、発達障害の場合は、おおむね以下のように、障害の程度が分類されています。
また、平成28年9月1日には、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が作られ、このガイドラインによって認定が実施されています。
障害に関わる等級ガイドライン
ガイドラインができる前は、地域によって、認定の傾向にバラツキがあったと指摘されています。
でも、講師の先生からは、こんな話も聞きました。
「今まで基準がゆるめだった地域では、このガイドラインによって不支給決定になった方もいます」
全国的な格差は是正することができましたが、特に認定のボーダーライン上にいる方(多くは精神障害の方です)が、そのために困った状況に陥っているのも否めない事実です。
精神障害の場合、状況を判断して認定するので、認定する側の主観がどうしても入ってしまうように思います。
年金財源のことを考えても、認定の基準が厳しくなる傾向にある、ともおっしゃってました。
ガイドラインは、以下の表を参考にしてください。
横軸が日常生活能力の程度を表し、縦軸は、日常的生活能力の判定です。
提出する診断書に、日常生活状況と日常生活能力のチェック項目があります。
あくまでも目安ですが、それらの数によって、等級を割り出すことができます。
では次に・・・
申請書は、どこで入手できるでしょう?
障害基礎年金の申請手続き!いつどこに?
一番早く申請するなら、20歳になる前からコツコツ準備して、20歳になる前日に提出するというのが、最短スケジュールですね。
障害基礎年金は、あくまでも障害を持つ側が申請しないと受給できないものなので、早めに申請するに越したことはないでしょう。
提出先は、住まいのある市区町村役場の窓口です。
市区町村役場は、あくまでも受付窓口なので、ここで受理された=年金受給が決定したわけではありません。
そして受付なので、ここで提出を拒まれることもありません。
必要な書類は、同じく市区町村役場や年金事務所で入手できるほか、街角の年金相談センターや日本年金機構のHPからもダウンロードできます。
続いては、必要書類についてですね・・・。
申請に必要な書類は?重要な2つの書類を解説!
医師に依頼して書いてもらうものには、
- 診断書
- 受診状況証明書(初診日の証明をするもの)
申請する人が書くものには、
- 年金請求書
- 病歴・就労状況等申立書
があります。
特に「診断書」「病歴・就労状況等申立書」この2つが非常に重要です。
なぜなら、これらの書類によって、等級が決まるからです!!!
療育手帳などの度数判定では、相談員の方が実際に子どもに接して、検査をしてくれますが、障害年金に関しては、書類のみの判定なんです。
提出した書類がすべてです。
子どもの障害の状況を、この2つの書類で最大限表現しなければなりません。
特に等級の判定には、診断書がものをいいます。
「子どもの状況をしっかりと理解してくれるお医者さん・・・障害年金に明るいお医者さんを、ぜひとも探してください!」と、講師の社会労務士の先生もおっしゃってました。
もし、万が一受給できないとなって、不服申し立てをするとしても、一度出した診断書は変えることができないんです。
うちの息子は、この頃は、ほとんど病院に行っていません。
乳幼児の頃は、ずっと入院していて、それこそ毎日のように病院のお世話になっていましたが、今では、さっぱりご無沙汰しています。
20歳に近くなって、診断書を書いてくれるお医者さんをあわてて探さないように、あらかじめ、信頼できるお医者さんに相談しておく必要があるでしょう。
また、「診断書」と「病歴・就労状況等申立書」の整合性がとれているかも重要です。
診断書を書いてもらう前に、事前に病歴・就労状況が分かっている場合は、共通する部分を、主治医の先生に話しておくことも必要でしょう。
違う病歴が書いてある・・・なんてことは避けたいものです。
そして、もうひとつ重要なのが、「病歴・就労状況等申立書」です。
これは、親が書くことになります。
「病歴」「日常生活の状況」「就労状況」を書く書式になっています。
生まれつきの知的障害の場合、生い立ちを、おのずと紐解くことになっていくでしょう。
子どもが、生まれてから20歳になるまでの物語を、小説のように丹念に書いていくことになります。
記憶を辿っていくと、当時がよみがえり、涙が出たという話も聞きます。
20年生きていてくれたことに、どうしても深い思いが溢れてしまう・・・
無理もありません。
記憶を掘り起こすことは、辛いことかもしれません。
時間も気力も必要だと思います。
でも、これは時間をかけて書く必要があることのようにも思います。
親の宿題なのかな~
日記をつけているなら、とっても楽ですね。
私も今からでも遅くない!ので、日々の印象を綴っておくようにしたいと思いました。
なかなか首が座らなかったとか・・・
食べ物にこだわりがあって、特定のものしか食べな買ったとか・・・
本来ならば、1人で行く遠足に親が同行しなければならなかったとか・・・
そのときの親の悩み=生活の困難さで構いません。
生まれてからの成育過程でのエピソードが、そのまま病歴であると解釈されます。
あくまでも病歴の書式なので、多少書きにくですが、些細なことでも思い出して、少しずつコツコツと書き溜めていきたいと思っています。
ほかにも、以下の公的な書類と、印鑑が必要です。
役所などで用意するもの
- 所得証明書
- 住民票など(本人の生年月日が明らかにできる書類)
- 受け取り先金融機関の通帳の写し(本人名義)
その他補足資料
- 身体障害者手帳や療育手帳
実際の提出書類もみておきましょう。
実際の申請書をみてみましょう!
先ほども書きましたが、日本年金機構HPからダウンロードできるので、してみました。
病歴・就労状況等申立書
診断書(精神障害用)
どうですか?
私は、すぐ書けそうな気が全然しません。
それに、20年間の生育記録です。
一枚だけじゃ足りないこともあるでしょう。
実は、講師の方からは、できれば、「20項目は書きましょう!」と言われました。
正直「えっそんなに?!」と思いました。
そんなに書かないといけないの?!驚くとともに恐ろしさが・・・
申立書は、一枚に5項目書けるようになっています。
20項目なら、つまり、少なくとも4枚は書くようにいうことですよね・・・
「今のうちからコツコツ書いていきましょう!」
社労士の先生のアドバイスです。
専門家に依頼するという選択も!
学校に来るセミナー講師の方は、社会労務士の先生が多いんです。
実際にお仕事として申請手続きを行なっている方です。
ネットを探せば、数多くの社会労務士の事務所が出てきますよね。
どんな方に依頼すればよいか・・・
もちろん費用もそれなりにかかってしまう・・・
悩ましい問題は出てきますが、信頼できる方がいれば、専門家に依頼するのも、ひとつの手です。
社会労務士であり、ご自身も障害を持つ子の親であり、という方もいらっしゃいます。
また、申請手続きをしてくれるわけではありませんが、年金事務所に直接相談に行くという方法もあります。
年金事務所では、予約制で相談を行なっています。
申請してからの流れは?
申請書類もなんとか作成できて、めでたく申請も終わった!となったら、だいだい3ヶ月、待ってください。
障害の状態が認定され、障害年金が決定されて、その後の手続きを含めると、約3ヶ月ぐらいかかると言われています。
そして、受給が決定されれば、「年金証書」「年金決定通知書」「年金を受給される方へ(パンフレット)」が届きます。
・・・もしもの場合、年金が受け取れないという残念な場合も・・・「不支給決定通知書」が届きます。
もしも申請が通らなかったら?
万が一ですよ。
万が一にも避けたいことですが、もーし申請が通らなかったら、どうしましょうか?
やれる限りのベストな申請書を出してダメだったのなら、もうやりようがないので、諦めますか?
諦める・・・という選択もひとつですが、不服申し立てをして、もう一回、審査請求をする、ということもできます。
その場合は、不支給決定を知った日から、3ヶ月以内に審査請求をしましょう。
審査請求の申請先は、地域の地方厚生局です。
なんで、ダメだったのか・・・対策を考えて、追加書類を作ったりしましょう。
この段階で、社会労務士に依頼するというケースが多いようです。
相談したからといって審査が通るかといったらそうでもなく、再審が通ること自体がもう難しいとも言われています。
そして、縁起でもないと思われるかもしれませんが、再審請求に備えるためには、提出書類は全部コピーをとっておきましょう。
また、行政不服審査法の改正により、審査請求のときに、口頭で意見を述べる機会が設けられました。
口頭陳述は、あくまでも希望なので、省略することもできます。
ここまでくると、もう未知の世界ですよね。
一体どんなことになるのか想像もつかないことですが、先日のセミナーの先生によると申請者が直接やるのは、おすすめしないとおっしゃってました。
この口頭陳述は、代理人でもいいんです。
社会保険労務士のみの出席で行うことができます。
再審請求をする方は、精神障害や発達障害によって年金受給したいという方が大半です。
口頭陳述を行う場の雰囲気は、あまり友好的ではなく、精神的なダメージになる場合も多いとのことでした。
社労士の先生にお任せできるものなら、その方がよいのかもしれません。
続いて、年金を受給して何年か経って・・・更新の手続きについてです。
障害基礎年金には有期更新がある
申請時には、等級の審査が行われるとともに、有期年金か、無期年金か、どちらかに認定されます。
有期年金の場合は、何年かごとに更新手続きが必要です。
障害状況確認届の提出が求められます。
更新時には、お医者さんの診断書が必要ですが、障害状態に大きな変化がないのであれば、できるだけ診断書の内容は変えない方がよいと言われています。
内容を変えると、状態が良くなったとされたり、不支給の理由になったりする可能性があります。
これは、ぜひとも避けたいですよね。
できれば同じかかりつけ医に、同じ診断書を書いてもらうのが安心でしょう。
そのためにも、診断書は絶対コピーをとっておきましょう!
そしてまた、年金受給が認められ、何年かたって・・・こんなこともあるかもしれません。
障害基礎年金には所得制限がある
20歳前の傷病による障害基礎年金は、本来納付する分が免除されて受け取れる年金ということもあり、老齢年金や遺族年金とは違って、所得制限があります。
年間の所得が360万4000円で半額になり、462万1000円で全額支給停止です。
この場合の所得とは、非課税所得以外の、主に給与所得から障害者控除分などを除いた金額です。
これは、実はあまり気にしなくてもいいかぁ〜と思います。
所得制限にひっかかるぐらいの所得があれば、問題なく生活できていますよね。
それに一年単位での判定なので、また所得が減れば、支給は再開されます。
それから、就職したら、年金が受け取れなくなったという噂も聞きますが・・・
就労は支給停止の理由にはならない
就労することは、年金が受給できない理由にはなりません。
しかし、就労できるからという理由で等級が3級になるという場合は、あるかもしれません。
つまり実質的に受給停止ということになってしまいます。
事業所にもよりますが、就労継続支援A型での月額平均賃金は70,000円程度、就労継続支援B型では15,000円ぐらいです。
就労支援事務所での就労では、生活能力があまりないと認定されるかと思います。
でも、一般企業や特例子会社に勤務し、ある程度の収入が得られている場合は、それだけ生活能力があるとされ、障害等級を軽めに判定されてしまう、という場合もあると思います。
ほかにも、先日のセミナーで初めて聞いた話ですが・・・
国民年金にも加入しましょう!
先生が当たり前のように「国民年金にも加入しましょう」と話されました。
???何いってるのか、はじめはよくわかりませんでした。
障害基礎年金を受給しながら、国民年金の保険料を納付するって、一体どういうこと?
たとえば1級だと月額76,000円ですが、それを受給しながら、月々約17,000円の国民年金保険料を納付するの・・・???
年金に明るい方はそんなに不思議なことではないかもしれませんが、私は、このことを聞いたとき、なんでそんな無駄のことをするのか、全然理解できませんでした。
なので質問したのですが、どうやら、これは、「老齢年金」を受給するときを見越して・・・ということでした。
「障害年金」から「老齢年金」に切り替えたとき、法定免除されていた期間分が半額支給になってしまうんです。
え〜、そんな制度なの?!
つまり、20歳から60歳まで、ずっと障害基礎年金を受給していたとすると、40年分の年金額が1/2になるということなんです。
息子が60歳まで生きているかどうかはわかりませんが、将来、老齢年金を受給するときに後悔するかもしれない・・・という話でした。
もちろん、厚生年金に加入できる職場環境だったら、それに越したことはありません。
厚生年金に加入できる事業所に就労できたら、それが一番ベスト何だろうな〜だと思います。
ポイントのまとめ
さてさて、
障害基礎年金について、ざ〜っと、セミナーで得たことも織り交ぜながら、書いてきました。
私の覚え書きですけど、今までのポイントを整理してみます。
- まずは、3つの要件を満たしていること
- かかりつけ医とあらかじめ相談しておくこと
- 医師による診断書、病歴・就労状況等申立書が重要だということ
- 20歳前傷病による障害基礎年金を受給するには障害等級1級、2級に判定される必要があること
- 等級判定ガイドラインができて、判定の目安ができたこと
- 申請ができるのは、20歳になる日の前日から・・・
- 年金保険料の納付が法定免除されていることもあり、所得制限があること
- 年金事務所に相談に行く、社会労務士に依頼するなども選択肢もあること
- 老齢年金のことも考慮して国民年金に加入しておくこと
息子が20歳になるのは、6年後です。
いざ、障害基礎年金に申請するときになって、あわてないように、今からできることをしなくちゃ!です。
まずは、彼の生育歴を書き溜めていくこと・・・
準備します!