障害者グループホームって知っていますか?
障害者が、親元を離れ、生活のサポートを受けながら過ごす小さな家のことです。
うちの息子も中学3年になり、この先のことが懸念されます。
順調にいけば、卒業とともに、どこかの作業所や会社で就労して・・・
それぐらいは予想がつくけど、そのさきは?彼の将来設計は?
ゆくゆく彼はどこに住むんでしょうか?
18歳の彼は、しばらくは親と同居するのでしょうが、30歳になり、40歳になって、親もいなくなったら・・・どうなるでしょう?
考えただけでも、心配が後から後から・・・
今後、国の政策もあって、障害者の住まいは、小さな規模のグループホーム、ケアホームに一元化されていく流れです。
これからの彼の生活をイメージするためにも、グループホームがどんなところか、見学に行ってきました。
目次
障害者グループホームを見学してみて
勉強不足と言われそうですが、予備知識がないまま行きまして・・・
そこで興味深かったのは、施設長さんのこの一言でした。
「グループホームは、集団として暮らしているのではなく、個人の暮らしが基本にあるんです。」
ふーん、そうなのか、
つまり、グループホームが障害者を一律に管理しているのではないよ、ということですね。
「住んでいる皆さんは、それぞれ自分のペースで、それぞれの生活をしています。グループホームは住まいを提供すると共に、障害によって出来ない様々なことを補うというかたちで、生活の手助けをしています。」
なるほどです。
古いタイプの障害者施設(学校もそうですが)は、一日のスケジュールがあって、彼らがしていたのは、与えられたものをこなすという受動的な生活でした。
そうではなくて、主体は障害者にあるということですね。
グループホームは、彼らがやりたいことができるようにサポートするというスタンスです。
これを聞いて、グループホームがどういう特性を持つものか、根本的な趣旨が理解できました。
今回、見学したグループホームは、2018年に新しく建築された、3階建て鉄筋コンクリートの建物です。
1Fには生活介護の就労施設があり、2階と3階がグループホームになっています。
グループホームは、男女別の3つのユニットからなり、ひとつのユニットには4~6人が生活できるスペースがありました。
だいたい18人が暮らせる規模ですね。
それぞれのユニットには、共用のリビング、キッチン、個室、その他に入浴、洗濯、洗面などを行う水回りが完備されていました。
一般的にいうシェアハウスに、ヘルパーさんがいてくれて、薬の管理や、食事の提供、洗濯・掃除など日常的な身の回りの世話をしてくれるといったイメージでしょうか。
暮らしている皆さんは、平日の昼間は、それぞれの勤務先や通所施設へ通って仕事をしています。
休日も、ヘルパーさんと外出する方、自室でゆっくりする方、家族のいる実家へ帰る方、様々でした。
障害者グループホームってどんなところ?
今回見学の機会に恵まれて、グループホームがどんなところか、一見にしかずだったわけですが・・・
そもそも「グループホーム」とは、どんなところなんでしょうか?
そのへんから復習してみます。
「グループホーム」とは・・・
障害者が世話人の支援を受けながら、地域のアパートや戸建てなどの一般住居で共同生活する、そのしくみと生活の場のこと。
原則10人以下ぐらいの規模で、社会福祉法人やNPO法人などが母体となって運営されています。
今までの障害者施設と異なるのは、何と言っても、地域に溶け込んだものになっているという点です。
住宅地にある現存の家屋をグループホームにリフォームした、というケースも少なくありません。
障害者はグループホームに住んで、公共機関や送迎バスなどに乗って、別の場所にある作業所や一般企業に通勤します。
グループホームは、あくまでも生活の場という位置付けです。
職住を一緒にしない、仕事は他の場所へ移動して・・・という原則があるようです。
そこには、一つの施設ですべての生活が完結しないように、という意図がみて取れます。
毎日一度は街に出て、社会との接点をもつということでしょうか?
今回見学した施設の方も、何度も強調して言われていましたが、グループホームに入居している人は、この施設の1Fにある就労施設には、通えないのです。同じ施設内で1日が完結してしまうことがないように・・・ですね。
一般的には、通勤のストレスを軽減できるので、職住隣接は悪いことではないですが、障害者にとって職住を別にするという考えは、どうやら大事なことと捉えられています。
この考えの経緯は?どこからの発想なんでしょうか?
ノーマライゼーションってことなのかな?
職住を別にするという考えの根底には、ノーマライゼーションの発想があるようです。
ノーマライゼーションとは・・・
・障害をもつ者ともたない者とが平等に生活する社会を実現させる考え方
・違いを吸収して全体を均一化すること。
以前の障害者の住まいといえば、郊外の広い敷地にあって、何十人もそこで暮らしているというものでした。
入所した障害者は、施設内に職場も住居も両方備えているので、どこかにいかなくても、一つのところで生活が完結してしまい、必然的に、社会と離れた暮らしになってしまった・・・。
グループホームのあり方は、古い福祉施設を反省してできあがったアンチテーゼになっているような気がしないでもありませんが、障害者の住まいとしては、今考えられる最善の策となんだと思います。
グループホームに入居したい場合はどうすればいいですか?
こちらのグループホームの入居説明会には、100人以上の方が集ったと、うかがいました。
入居の定員人数はたった15〜18名、しかも施設のある市在住じゃないと、入居できないにもかかわらず、です。
何年か前、保育園の待機児童問題が話題になりましたが、グループホームも、ぜひ問題にして取り上げてもらいたい!
グループホームは徐々に増えているとはいえ、障害者の、これからの住処として、 まだまだ圧倒的に少ないのが現状です。
保育園は年長さんになれば卒園しますから、自動的に空きができますが、障害者にとってのグループホームは、終の住処なんです。
保育園以上に深刻な問題だと言えます。
質問コーナーで施設長さんに質問しました。
「こちらのグループホームにはどうしたら入居できますか?入居条件はなんですか?」
その答えは、また、なんとも悩ましいもので・・・
一番の入居条件は「緊急性」。
保護者の病気や死亡とか・・・、緊急に入居しないと生活が立ち行かない状況に陥っている方が最優先されると・・・。
まあ、こちらの施設は、市立の障害者センターを管理運営する社会福祉法人ということで、「緊急性」が優先されるのだろうなぁと推測されますが、なんとも残念な回答でした。
「様々な条件を考慮し、必要性を基準に、決定されます。」
結局、細かな入居要件が具体的にどうなっているのかはわかりませんでした。
それに、現在、3つあるユニットで稼働しているのは2つで、あとの1つについては、入居者の検討を進めているとのことでしたが、一般の募集はされないということでした。
入居したい人は、一体どうすればいいものやら・・・親の努力でどうにかなるものでもなさそうでした。
障害者の親が、子供のためにグループホームを開設したという話、割とよく聞くのですが・・・
入居できないなら自分で作るしかない!
親としては、そんな一心で実現されたのだろうなぁと思います。
その気持ちは痛いほどよくわかります。
グループホームのメリット、デメリット
さて、そんなこんなのグループホーム。
おさらいもかねて、メリット&デメリットを考えてみましょう。
主なメリットは、地域社会の中で普通に過ごすことができるということでしょう。
他にも、
- 小規模なので、一緒に共同生活する人や支援ヘルパーとも、近しい人間関係になれる。
- 一般住居なので、自分の家のような雰囲気の中で過ごすことができる。
- スタッフは支援者という立場であり、障害者の意思が尊重される。
などが挙げられると思います。
そして、デメリットは、
- 共同生活をする入居者や支援ヘルパーとの相性が、生活の質に直結する。
- 日中を過ごす通所施設などとの連携が不可欠であり、
- 客観的な支援体制を構築する必要がある。(メリットとも言える)
- 近隣住民に開設の同意が得られない場合もある。
- 支援者の確保(特に夜間)、定着が難しい場合もある。
- 入居したい人に対して入居できるグループホームの数が圧倒的に少ない。
- どうやったら、入居できるのか情報が乏しい。
などなど・・・
障害者のそれぞれの特性によって、他にもいろいろ、考えられることはあるかもしれません。
親の心配が先行して、それがデメリットに見えてしまう場合もあるでしょう。
これは私の個人的な見解ですが、
- 部屋がキレイに掃除され整頓されていること
- 日当たりの良い部屋であること
- ストレスのない設備であること
「場」が整えられているということも重要だと思っています。
たとえば、クセのある古い設備を工夫してうまく使うなど、障害者にはできません。
お湯を沸かすにしても、ガスレンジは回せないけど、スイッチを押すことはできたり・・・うまく環境がしつらえられれば、自立できることも増えるというものです。
まとめ
何十年か先の将来を見越した上で、知的障害者の息子に、住まいを準備するにはどうすれば良いか、今回は、このような視点で、グループホームの見学会に行ってきました。
かえって不安材料ばかりが集まったような気もします。
まだまだ情報不足が否めませんが、ともかく、こりゃー前途多難だな、ということだけはわかりました。
息子がどうしたいか、想像するしかないですが、住まいに関していえば、生まれた土地で、住み慣れた街で、できれば、家族や知り合いのいる地域のグループホームで暮らしていければ、それが一番ベストなんじゃないかなと思います。
でも、地域のグループホームは飽和状態で、息子をグループホームに入居させるには、もしかしたら本当に、親がグループホームを作るという可能性を、考えなくてはならないかもしれません。
息子が地域のグループホームに入居できる可能性は、今のところ0%ですから。