ダウン症が「遺伝子異常の先天疾患である」というのは、みなさん周知のことと思います。
顔つきや筋肉の柔らかさや、コロンとした手のひらなど、共通の身体的な特徴があるのも、よく話題になります。
身体的な特徴をまとめた研究は多くありますが、実のところ、ダウン症の人たちは、情動的な反応にも同じような共通の傾向があるとされています。
つまり、一般的に性質や気質とされる、心理面の範疇のことも、ダウン症にとっては、ある意味障害の一部なんです。
あまり話題にはなりませんから、個人的な性格と、捉えられてしまう場合が、残念ながら多いと思います。
ダウン症と接したことがある方や支援者じゃないと、なかなか分かりにくいことでしょう。
ダウン症の子のをもつお母さんたちの間では、同じような場面で同じような反応する、「そうだよね〜あるある」という話になるんですけどね。
よくいうと「マイペース」、度を越すと「切り替えがうまくできない」「頑固」これらは本当に聞くキーワードです。
で、私も、そんなときの困った状態を乗り切る、操縦法があったら、どんなにいいか?と思うんです。
うまく息子を支援するには、一体どうしたらいいんでしょう?
どんなとき頑固になるの?息子の場合
ダウン症の子の「あるある」なんでしょうね。
イヤ!となると、テコでも譲らないという状況になることが、しばしばあります。
「マイペース」なうちの息子も、ある時、ある場面で、頑固になって、よ〜く困ったことになるんです。
たとえば、その1。
学童に迎えに行くと、その直前までやっていたことがやめられなくて、「帰らない!」となる・・・とか、
その2。
朝、学童で使いたい遊び道具を学校に持っていこうと、ダメと言ってもガンバる・・・とか
その3。
暑いから上着を脱がせようとすると、なぜか絶対脱がないとがんばる、逆に寒ときに着せようとすると着ないとなる・・・など
まるで保育園児でも、もっと聞き分けありますよね・・・もう中学生なのに・・・トホホ・・・困ったことになるときが、よくあるんです。
時間のあるときは、少し時間をおいて、もう一回説得するとか、それなりの対応ができるのですが、朝の時間のないときなどは、最悪の事態を招いてしまいます。
こちらも余裕なく怒ったりすると、もう大変、それ以上のパワーで跳ね返って来るんですよね。
地団駄を踏んだり、ドアをバン!と思いっきりっ閉めたり、しまいには感情が吹き出て、わぁーと号泣となり・・・
母はと言えば、息子を泣かせてしまった後、必ず後悔に見舞われます。
泣かせしまったことが、ほとほと悔やまれて、いつも自己嫌悪になるんです。
一方、息子は、独りごとというか、一人二役の会話をしています。
「大丈夫?」
「うん、持って言っちゃ×(バツ)だよ」
「もう大丈夫だよ」
会話や場面を思い起こして、自分で自分を説得するような、慰めているような、一人会話をしています。
そんな健気な姿をみると「泣くまで拗れさせることなかったのに・・・」
さらに輪をかけて申し訳ない気持ちになるのですが・・・
この悩ましいループ地獄・・・
一体どうすれば解消できるんでしょうか?
ダウン症の特徴なのかな?
私自身、この「ダウン症あるある」が続いていたので、<ダウン症,頑固>というキーワードでネット検索していたんです。
なかなか有用な記事に巡り会えなかったのですが、あるとき、「ダウン症のある子どもたちへの指導」というテーマで、全国の特別支援学校の先生へアンケートをとった、という記事をみつけました。
ダウン症の本も書いておられる佐藤功一氏(宮城県立支援学校女川高等学園教頭/2018年当時)の記事で、調査は2009年に行われたものでした。
そこには・・・
このグラフの上位1位2位は、まさに息子のことです。
「場面の切り替えが難しい」「頑固」というのは、私の兼ねてからの懸案事項だったんです。
そして記事には、先生自身もダウン症の生徒の指導に苦労したことが書かれていました。
算数や国語や、教科的な学習指導のノウハウはあるものの、それをやらせるまでの、ダウン症の子供たちのやる気をどう導くか・・・
検証が難しいテーマでもあります。
そのあたりは有効な方策がないまま、現場の指導者の力量に委ねられているというのです。
その場しのぎの対処法でも、ある程度、なんとかなってしまうから・・・曖昧なまま、解決方法が広がっていないのが現状ということでした。
また、問題になってしまう要因のひとつには、学校は、時間割で動いているということもあります。
この時間内に終わらせる、気持ちを切り替えるは、彼らにとって、もっとも苦手なことなのです。
うまくその流れに乗れなかった日は、ほとほと「困ったさん」になったりするのも想像に難くありません。
切り替えができない原因はなに?
「場面の切り替えが難しい」→「問題を起こす困った生徒として捉えられる」→「注意される」→「なおさら頑固になる」→「怒られた記憶の蓄積」→「やりたくない・自信喪失」
この気持ちの流れは、健常な子供の場合でもよくあることだと思います。
でも、ダウン症の場合は、「注意される」→「なおさら頑固になる」の段階が際限なくて、こちらが引かないうちは、この2つの行ったり来たり、ここがなんどもループするんです。
結果、「頑固」という部分が強調されてしまうんです。
おかげで「ダウン症の人は頑固だ」という風に定義されてしまいます。
では、この悪循環に陥らないためにはどうしたらいいのでしょうか?
私と息子の場合は、なんとか私が冷静になって、少しの間、「引く時間」を作るで対処していたのですが・・・
この、佐藤先生の記事によると、なぜ、その状況に陥ったか、パターンがあるとしています。
行動にブレーキをかけている原因が、「頭・心・体」のどこで起こっているのか見極めることからはじまります。
- 頭(理解面)
先の見通しや次に何をしていいかがわからない - 心(情意面)
やりたいことを続けたいから、次に移れない - 体(健康面)
疲れていたり、具合が悪いために行動できない
この方法、わかりやすいですよね。
うちの息子の場合は、3.体(健康面)の時は本当にグッタリしているので、それは、まあわかるとして。
1.頭(理解面)2.心(情意面)の間ぐらいが原因になることが多いように思います。
「自分が予想していたこととは違った場合」です。
納得いかないとなるのです。
うまく気持ちを切り替えさせるには?
さて、ここがもっとも知りたいとところでしょう。
「頭・心・体」のどこに原因があるか、わかったら、検討違いの「言葉がけ」をしなくて済みます。
原因を取り除くような「言葉がけ」(+カードなど)をすればいいということになるのです。
- 頭(理解面):何をすればいいのか分からない場合は、音声だけでなく、視覚でも指示できるとよりわかりやすく、スムーズです。
前に私は言葉だけで、「ゴミ出しをして、それから学童に行くから、車に乗って待っていてね。」と指示したことがあったのですが、勘違いなのか、思い込みなのか、ゴミを出して、そのまま学童に一人で向かってしまい、迷子寸前だった覚えがあります。 - 心(情意面):やりたいことを続けたい場合は、手伝って区切りの良いところで終わらせるか、時間や家族が迎えに来たら止めるなど、場面を想定しルール化するなどでうまく行く場合が多いです。
一番厄介なのは、1と2の間の場合、「期待を持っていたことが外れてしまった」場合でしょうか〜〜〜〜〜
残念だった気持ちを受け止めて、一旦諦めさせねばならないのは、一番難しいです。
また、新たな期待を持たせるのも、今後に響くので、一番有効かなと思うのは、他に気持ちをそらすことです。
うちの息子の場合、多くのとき、食べ物に逃げたりします。
食べものも多用すると、全く響かないときもあって、色々なんですが・・・
まとめ
実は、以前から思っていたのですが・・・
この、「ダウン症は頑固だ」という決まり文句にはすごく抵抗がありました。
「頑固一徹」とか「頑固オヤジ」とか、頑固と言われるものには、尊敬の念を感じられる意味合いの言葉もありますよね。
ですが、ダウン症に関する「頑固」には、明らかに良い意味が感じられません。
「頑固=意志力の強い子」とは捉えられず、「頑固=困った子」になってしまうのです。
もし、彼らに対する周りの対応が違ったら、本当は頑固ものではなく、全然違う存在になれると思うのです。
「やりたいことをやる」、「最後までやる」という意志力を育てるのも大事なことです。
意志に「頑固」というレッテルを張ってしまったら・・・やる気を奪うという、境界を超えてしまう危うさがあるように思うのです。
自分のやりたいことをやらせたら、全然遅くないんですよ。
この間なんて、Suicaを持たせたら、あっという間に一人で自販機でりんごジュースを買っていました・・・
目的さえはっきりすれば、素早い行動力も、期待できるんです。
いつも作業が遅い人たちではないんです。
そこは見誤らないように慎重さが必要ですね。
「ダウン症は頑固じゃない」彼らのイメージを一旦はらって、それを踏まえた上で、原因が「頭・心・体」のどこか、そして、原因にあった「言葉がけ(+カードなど)」をする
ですね!
佐藤先生は、さらに、その子独自のパターンを得るために、データを取ってみることを推奨されています。
「言葉がけ」はもっとも難しいところですが、「魔法の言葉かけ」という本でも参考にしてみようか・・・と思っています。
息子の行動がスムーズになるように、良いところは伸ばして、変えていきたいと思います。
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